赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
通報 |
>蜥蜴のビル
(舌打ちにびくりと身体を揺らし困ったように下がる眉は、上がりっぱなしの口角によって笑っているかのような表情で。それでもナースが居ないという言葉に理解が及ばず、困り顔からきょとんとした表情に移れば続く言葉を大人しく待つ。アリス、と与えられた名前を神妙な顔で鸚鵡返しに呟くも、難しい説明より俄然心惹かれたのは眼前に晒された赤い双眸。説明の最中にぱあぁと顔を輝かせれば、「お目目が赤いよビルせんせー。うさちゃんと一緒だね」躊躇無くその赤い目に手を伸ばしては、ふにゃと笑みをこぼそう。無論、指が目に入ると痛いなんて発想などそこにはない。くわえ、ナースは居ないという言葉、病院は無いという説明。それが注射の先生が居ないという考えには至らず、大人の男性は注射の先生という病院生活で培った偏った見解が、教えて貰った名前に"先生"と付けて名を呼ぼう。そんな幼い思考回路は、それ故に世界が違うのだと国には帰れないのだと説明を受けても悲観の様子もなく受け止めて、つつかれた額をべちりと両手で押さえながら元気一杯に頷き言葉を返す。「いいよ、もう誰も待ってないもん。これからはビルせんせーが一緒なんでしょ?」歩み始めた背中を追い掛けながら、含みのない言葉の割に縋る視線がじいと横顔を見つめて。)
トピック検索 |