赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>蜥蜴のビル
おじさん、だあれ?
(声を上げたところで応える者も無く、それは常に人の監視下で生活してきた己にとっては異常な事態で。赤ばかりのこの庭園は、最早不気味にしか映らず誰か人を探してみようかと一歩足を踏み出した。スリッパからはみ出した裸足で芝を感じながら、どこへ向かえば病院へ帰れるのだろうと視線を彷徨わせていれば、ふと何かの気配に振り返り。目にしたのは長い病院生活では見たことのない荒々しい風体の男性で、だがそれは怯える理由にもならず、話し掛けられたからという安易な理由でパタパタと駆け寄れば、相手の言葉は一切合切無視して無邪気に質問を。こてりと首を傾げる様子は大人びた容姿に対してどこか不似合いで、然し本人は至って気にせず「すねてないもん、ナースのお姉ちゃんが無理やり連れていこうとするのが悪いんだもん」拗ねるという単語に、病院での一連のやり取りを咎められていると勘違いしては、むうと頬を膨らませぷいっと視線を流して。だが薔薇園の中に取り残されるのは恐ろしく、怒らせて置いて行かれてはというちょっとした危機感から、ん、と前へ突き出したのは長い右手。此処がまさか別の世界だとは思いもよらず、大人しく検査に連れて行かれてあげますよ、と何時も通り手を繋ごうとし。)
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