小説家 2018-05-27 13:15:22 |
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わ、分かりんした。
( 職業柄か、己の名と話の名を結び付けて呟きを零す彼を幾度か双眸を瞬かせ乍見。恐らく今の彼の脳内には、様々な情景や美しい言の葉が絶えず頻りに溢れているのだろう。暫し沈黙の下りた場に再び穏やかな声が響く。立ち上がる其の姿を目で追い慌てた様に一つ返事をしては、書斎へと戻って行く様子をじ、と見詰め、人の気配が完全に失くなると温もりを求めて布団の中に潜り目を瞑り。
─── 次に目が覚めたのは、夜も更け穹が漆黒に染まった頃。精々二、三時間程しか経っていない様ではあるが、反して辺りは暗く冷たい雰囲気を放ち。夜ともなると、如何しても花街に居た頃の記憶が嫌でも蘇って仕舞い無意識的に顔が強張る。品定めするかの如く這う客の目線、伸ばされる武骨な手、追想されるは其の様な光景ばかり。寒さに耐え難いからだと自分自身に言い訳をしては微かに震える己の肩を抱き。 )
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