小説家 2018-05-27 13:15:22 |
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…焦る必要は無い、君が居たいと思う迄居れば良いよ。此の屋敷には私の他には誰も居ない。気を使う必要はない。
( 矢張り年頃の少女、差し出した牡丹を見て表情を綻ばせた事に此方も釣られるように優しい微笑みを溢して。然し直ぐにその表情は暗さを孕んだ物へ、少女の口から出た言葉でその訳を察し、そっと其の髪を撫でてやり。まだ二十歳にも満たないで在ろう此の歳の少女が、自分の行先に不安を覚えながらも迷惑掛けまいと気丈に振る舞う姿は、何処か寂しさを感じて仕舞う。怯えと、覚悟と、寂しさと、歳の割に様々な柵を背負い過ぎた彼女を、笑顔にしてやりたいと願うのは独り善がりだろうか。再び彼女の髪を軽くくしゃりと撫ぜ乍ら柔らかく微笑んで。 )
──牡丹の花が開く頃、身体が治ってから、先の事はゆっくりと考えれば良い。今は休養が第一だ。
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