小説家 2018-05-27 13:15:22 |
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( 快く承諾を示した彼の暖かな対応に、知らずの内に硬直していた全神経が一気に弛緩していくのを感じる。小さく頷き、粥を作る為一度退室した彼の足音が消え入ると静寂が辺りを支配し。障子からは濃くなった夕が差し、微かに烏の鳴き声が耳朶に触れると本当にあの鳥籠の世界から抜け出して来たのだと惘考え。幾許か時が経った後、再び現れた彼が手に持っていた盆には粥、林檎、緑茶と並んでおり、ふわりと良い香りが鼻腔を擽る。久方振りの温かい食事に黒曜石を煌めかせ、盆を受け取り乍こくりと首肯し。手前に在った小振りの散蓮華を持ち、一掬いして口元に運び咀嚼すれば、口腔内に広がる優しい味わいに途端に表情を綻ばせ言葉を洩らし。 )
おい、しい。…とても、美味しゅうござりんす。
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