小説家 2018-05-27 13:15:22 |
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( 力無く伏せられていた双眸を凜然と向け、見据える其の先の彼は、あろう事か謝罪を零す。介抱してもらった身である己が如何に無礼な態度をとっているか、自分自身が良く分かっている。然し彼は怒りを全く見せず行き場のなくなった掌を緩りと下ろし。穏やかな顏に、差し出された手拭い、彼は善人なのかもしれないという可能性が微かに脳裏を掠めるも、未だ外観のみでは信用するに足りないと相反する思いが鬩ぎ合い。眼前にある手拭いを一瞥しては徐に立ち上がる彼と動く唇を無言で見詰め。すうと小さく息を吸い込み、言葉を被せる様に僅かに震え凛とした声音を響かせ彼の人間性を試すかの様な問を投げ掛け。 )
──そんな事云いんして、ほんにはわっちを女衒に売る心算でありんすか。
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