小説家 2018-05-27 13:15:22 |
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──ッ、!
( 大きな双眸を忙しなく動かし、先ず把握した事はこの邸内が遊郭の類ではない事。連れ戻された、と云う可能性が無に均く成った安堵と果たして今居る此の場所は何処の誰の邸なのかという不安が同時に胸中を渦巻き。幾多の物思いに耽ていると、目線の先に在る襖が静かに開かれ姿を現した家主であろう人物。年の頃は三十路近くか、幾許か。美しい真黒の髪に若々しい白皙、何よりも綺麗で端整な面持ちが一際目を引いた。暫し惚けて近付いてくる彼を見遣り、されるが侭に己の顔を拭って貰っていたが、一度我に返れば反射的に勢いよく彼の掌を払い除け。重々しい身体に鞭打ち軽く状態を持ち上げつつ、瞳に警戒心を浮き彫りにし乍敵とでも言いたげに其方を睨めつけ。 )
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