助手 2018-05-23 21:25:11 |
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(寒くて堪らない、しかしシャーロックが最後の数字を叫んだのを聞いた。持っていた黒い箱を手から滑らせないようにしながら、最後の紫の文字盤に言われた数字を打ち込んだ。爆弾のランプの点灯が消えたかを確認する前に、突然水の中に引きずりこまれるような感覚に息を飲んだ。身体に括り付けられた鎖の長さが足りず、これ以上上に浮かぶ事が出来なくなったのだった。水槽の底に固定された鎖はピンと張り水の上に顔を出している事さえ許さないとでも言うかのように自分の身体を離さない。これ以上水が増えたら本当に溺死してしまう。もし仮に数字が間違っていたら、あと数分で爆発するであろう黒い箱は、その点灯が消えたことを確かめないままにその手から離れ、その重みで水槽の底に沈んだ。しかし爆弾が爆発することはないだろうという確信があった。思いがけず鎖に引き戻されたことで大量の水を飲み込み、ゴボリ、と水と空気とが音を立てた。あまりに長く冷たい空気と水に晒され、もう身体の感覚もない。シャーロック、と彼の名を呼んだ声も水の音に阻害され、ただ懸命に水面に顔を出し空気を取り込もうと足掻く。幼い頃の記憶がフラッシュバックして、息継ぎが不規則になった。シャーロック、早く、早く来てくれ。かつてない程の恐怖にさらされ、今すぐにでも彼の体温を感じない事には壊れてしまいそうだったし、本当に溺れてしまうと思った。)
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