赤の女王 2018-03-10 15:26:43 |
通報 |
( 閉じ込めていた感情を吐き出した解放感と引き換えに得た一抹の不安。彼の迷惑に成りはしないか、気持ちを伝えてはいけなかったんじゃないか。アリスはアリスとして、するべきことを全うしなければならないと告げられるのではないかと。そんな怖がりを杞憂に変えたのは彼が教えてくれた"我儘"で。疎ましいはずの独占欲がこんなにも心地良く、そして素敵だと思えるのは少しだけ不思議だ。きっと彼を好きになった所為だろうか。大人しく彼の腕の中に収まってみれば、うんと近付いた距離に気恥ずかしさを覚え。素直に表現された嬉しさに心がぽかぽかと暖かくなり、ふふ、と頬が自然と緩むと「 わたしも 」とすっかり蕩けた声で同意を。一度は彼の瞳に向けた視線も、自分の手が取られるとそちらに引き寄せられ、落ちて。誘導されるがままに触れると強く感じる其処に有る鼓動は彼が生きている証拠であり、壊れるはずもないのに何故だか"壊さない様に"と考えては指先にさして力も入れず、硝子細工に触れる柔らかさを保つ。――― 彼自身のこと、遊園地のフラミンゴさんとその恋人さんのこと、そして彼の決意。一言一句溢すことなく拾った言葉の羅列は夢の中に迷い込んだ現実みたいだった。降りるというのが何なのかも、自分自身の捜索も、まるで役に乗っ取られた役者のようなことを彼は言う。然し其れが"様な"では無く"正しく"其れであることを理解しているのは、自身も心当たりがある所為で。だからこそ彼の決意が生半可なものではないと確信しては、そろりと顔を上げて彼を見つめて。空いている片方の手を下から持ち上げると、唇に触れる手の小指を自身の其れで絡め捕り、「 いいの? いくらでも、貴方がもういいっていうまで呼んじゃうよ、 」 冗談半分にくすくす笑って。そのまま手をずらすと掠めていった親指に厭わず、僅かに空いていた距離を縮めて口付け。フレンチキスにも満たないのを一度だけ、けれど軽く唇を食んでしっかり名残を残してはリップ音と共に顔を離し、" やくそく、ね " とベビーピンクを纏った口端を悪戯っぽく引き上げた。 )
トピック検索 |