匿名さん 2018-03-09 02:12:00 |
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( 問を投げ掛けてからはた、と疑問点に気付く。意思疎通が可能な事を前提とした行動に出てしまったが、果たして本当に人間の言語を理解しているのだろうか。一抹の不安が胸中を掠めたのも束の間、生物に目を遣ると粗暴な光を放っていた双眸には落ち着きの色が垣間見え、威嚇するかの様に上下していた胸元は今や緩りと穏やかな呼吸を取り戻している。その上低い唸り声しか洩らさぬ口元からは人間でいう吃驚を表した様な素頓狂な鳴き声が漏れる。如何やら対峙する生物から攻撃を受ける事は万一にも無さそうだ、と脳の片隅で早々に結論を出すと次の反応を待ち。軈て胡乱気な視線はちり、と感じたものの案内役は務めてくれるらしい相手が軽やかな足取りで深緑の木々の谷間を抜けていくと、縋る様に必死に背中を追い。大分道程は険しく、足裏の皮膚が擦り切れていく鋭い痛みと激しい疲弊感にその身を焦がし乍、己の様子を伺う相手の優しさを糧に細い脚を懸命に動かす事、幾許か。森林内の自然的な美麗さと雰囲気とは一転、眼前に広がる空間は十六年間生を謳歌してきた中でも一度たりとも経験した事のないものであり。金色と真紅が複雑に混じり合い、混濁したかの如き夕陽の色彩が限りなく空を覆い尽くし、まるでその色をした幕が降りているかの様だった。所々には未知の神殿跡や文明の起こりを想起させる物が点在し、微風に髪と衣服を乱される事さえ厭わず一目散に相手の傍らまで駆け寄ると、さながら玩具を貰った幼子に似た純粋な輝きを双眸に宿し興奮気味に連々と言葉を紡ぎ。 )
──わあ、とっても綺麗…!海の底に沈んでいったかと思ったら、無人の島に漂着して、その島には美しい遺跡が沢山あっただなんて…!私ったら、きっと夢を見ているのね。…ねえ、そうよね、ミルティアディス。
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