匿名さん 2018-03-09 02:12:00 |
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( 甘ったるい匂いの持ち主は黄金色の蜂蜜に浸した様な艶やかな髪色と硝子玉を連想させる瞳、触れるには惜しい程にきめ細やかな白い肌の小さな訪問者から。通常の何十倍もある嗅覚を研ぎ澄ませつつ驚愕している様子を細まった瞳孔を通してじっくりと眺め。先程まで殺気立った空気は何処へ消え去ったのか、頭上からは衝撃で散った葉が数枚舞い降りて今や酷く静まり返った樹木の間で互いの呼吸音と何処からか聞こえる川のせせらぎが支配している。彼女が此方に釘付けになるのと同様に物珍しい訪問者に興味が向かない筈も無く、何処か懐かしい姿形に数千年の歳月によって錆び付いた記憶がほんの一部だけ蘇り。“人間”と言っただろうか、己が知る“人間”より衣服も雰囲気も異なるが走るには細過ぎる足と握り潰してしまいそうな小さな手と表情豊かな顔付きは紛れも無くかつてこの他にも存在した者と同等のもので。____最初に静寂を切り裂いたのは訪問者によるもの、猛獣の急所を仕留めた事により少しばかり荒ぶった感情が薄れていた警戒心を再び強くさせ咽頭から小さな唸り声を上げ鋭い牙が覗き訝しげに首を傾けて更に鼻先を近付けコツンと小さな鼻先に当てがい。余りに単純過ぎる質問は基礎に返るような気分にさせられ寧ろ難題となる。構造上人の言葉を発する事が出来ない故に口元は開きはせずに咽頭の辺りから深く響くような声で一言。「……ミルティアディス。 」暫くして反応を待つように首を起こせば腰を下ろしてゆったりと尾を揺らしながら見下ろし )
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