赤の女王 2018-03-04 13:31:36 |
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アンタって、眠り鼠とはまた違うのんびりさというか、お人好しさが伝わってくるわ(こちらの言葉の真意などまるで気が付かずに純粋な笑顔を浮かべる相手と話していると、この柔らかな空気感をあのふわふわとした鼠の思い出に重ねて呟き。「助けたくなるなんて今まで言われたこと……ッ!?」言われ慣れない言葉を払うように手をユラユラ揺らしながら否定しようとしたところで、繋がれた手に口付けられたことで動きごとそのままぴたりと静止状態。「あん、た、初対面の異性になんてことを……!」厚く塗ったはずのファンデーションは瞬く間にほんのりと赤く染まり、いつもなら威勢よく悪態をついている口はぱくぱくと金魚のように開閉を繰り返すばかり。元の世界であれば大声で叫んで人でも呼ぶところだが、目の前に居るのは絵本から飛び出してきたような容姿の優男で。言葉通り”お姫様扱い”をされているような気分になるその振る舞いは、抵抗する気を削ぐのには十分だった。「……ハロウィン。そういえばメイドもそんなことを言ってたっけ」初めて話を聞いた時には、世界が違ってもそんな風習は存在するのかと驚いたものだが、いざ装飾が施されているのを見ればその様子はどこの国のハロウィンよりもしっくり来るような気がしたものだ。「買うものは決まってるのよ。でも、折角だからそういう店でも何か買って行こうかしら。お茶に合うお菓子なんかもありそうだし……」相手の策にかかるように意識はすっかりそちらへ持っていかれてしまった。イベントなんて自分が楽しむものであって、誰かに何かを贈るなんて考えたことがなかったけれど、彼らが何を喜ぶかと考えるのは自分の中でごく自然なことになっていた。顎に手を当て考え込むようにしながら相手の歩みについて行って)
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