赤の女王 2018-03-04 13:31:36 |
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(絵が三月兎の元へいったのを視線で追い、更にそれを眺める相手の表情を窺うようにそっと顔を覗き込む。その口から出てきた言葉は絵を称賛するものではなかったけれど、自分が込めた気持ちはしっかりと伝わっているということが分かるものだった。こちらに腕が伸びてくるのを不思議に思い僅かに肩を竦めると、やさしい手つきで触れられたことで時間が止まったようにパチパチと数回瞬きを繰り返す。次第に自分が撫でられたのだということを理解していくと、顔をほんのりと赤くさせて緩む口元を手の甲で隠し。「ば、ばかなのアンタ! さっきまで嫌みばっかり言ってたくせに、急にこんなことされたら調子狂っちゃうじゃないの!」空いてる方の手で三月兎の肩を数度叩いてから、びっくりした、と小さく呟きながら自身の両頬を手のひらで包み込み。直後の問いかけは、これまで自分が考えてもみなかったこと。そもそも、こうして絵を描くのだってほとんど初めてなのだ。好きか嫌いか、そんなことは考えてもいなかった。「絵なんて描かないから、よく分からないわよ。でも、楽しかった。どこに線を引いて、どんな色を乗せるか考えるのって、ちょっと化粧に似てるの。化粧をするのは好きとか嫌いとかって話じゃないけど……少なくとも、嫌いじゃないのは確かね」頬に当てていた手でそのままテーブルへ肘をつき顎を乗せながら、ぼんやりと遠くを眺めるようにして答えを考えた。答える途中で、先ほど机に広げたパステルを指で転がしながら、絵を描いている時の楽しい気持ちを思い出しては目を細め)
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