赤の女王 2018-03-04 13:31:36 |
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(このあいだと庭の雰囲気が違って見えるのは、漂う紅茶の香りのせいだろうか。スッと通り抜ける爽やかなそれは、どうやら目の前の彼が飲んでいる紅茶から漂うものらしいと分かった。遠くからでも、眠り鼠が美人という所以が分かるほど。流れるような髪の銀色は、涼しげな目によく合っている。様々な色に汚れたシャツと対比するように、誰にも侵せない領域に居るような絶対的な美しさを持つ端正な顔。そんなことを考えている時間はほんの僅かで、つらつらと口から出てきた言葉はえらく辛辣なものばかり。「ははーん。アンタが美人で意地悪な三月兎って奴ね。メイドでもないし迷子でもないわよ。こんな美女がメイドになるなら感謝して欲しいくらいだわ」初めから相手が三月兎であることは分かっていたけれど、口が開かれた瞬間にそれが確信へと変わった。座れと言われれば相手の隣の席へ腰掛けて、ドレスの入った箱を膝の上に乗せる。「何を描いてんの?」テーブルに頬杖を突き、先程から何か描いているらしい手元を見つめ問いかけて)
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