赤の女王 2018-03-04 13:31:36 |
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(何かを言いたげにもごもごと口を動かす相手の顔は不思議で、クスクスとからかうように笑みを浮かべながらそれを眺めていた。突然手首を捕まれ反射的に抜こうとするものの、痛くはないのにびくともしないその手に眉を寄せ皺を作り。「ちょっと、離し……」さっきまでこちらが優位に立っていたはずなのに、今ではすっかり相手に主導権を握られてしまっている。手首がじんわりと熱を持ち始めたのは、痛みではなく羞恥からだろう。更に追い討ちをかけるように可愛いと言われてしまえば、熱は顔までのぼっていき。体温が上がるような心地になると共に、さっきまで優しかった眠り鼠が強引なことをしてくるのが何だか悲しくなって、うっすらと涙を浮かび上がらせる。「もう……うるさあい! 私だって自分の身くらい自分で守れるんだから! ばか!」相手の力が緩んだ拍子、べちんっと小気味よい音を立てながら頬を叩き。「庭、行くわよ! ……紅茶はミルクと砂糖がたくさん入ってるやつね!」浮かび上がった涙を指先の背で拭い、ふい、と顔を相手から背けたまま答え。けれど、相手が自分を思って言ってくれたということは理解しているし、お茶会という甘美な響きに足取りは徐々に軽く)
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