赤の女王 2018-03-04 13:31:36 |
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(自分の言葉を喜んでいることが窺える相手の反応はとても満足のいくもので、まるでこちらの心までじんわりと温かくなっていくよう。椅子へ腰掛けてテーブルに頬杖を突きながら、あんなに存在感を放っていたドレスがすっぽりと箱に収まる様子はなんだか不思議だなとぼんやり考えていた。仕舞われたのを確認して立ち上がれば差し出された紙袋を両手でしっかりと受け取り、ちらり、とその中を覗き込む。「もちろん。部屋に戻ったらすぐにハンガーへ掛けるわ。手入れも忘れない」礼を言う代わりに、 大切にする という約束を必ず守ることを伝え。眠り鼠に続いて出てきた名前は聞き覚えがあったけれど、はて一体誰だったか。一瞬の間をおいて、先日の眠り鼠との会話が甦り ああ! と声を上げる。「意地悪で美人なもう一人の同居人、ね。怒ってカップやお皿を割らないように気を付ける」今日は仕事をしにやって来たつもりだったけれど、思いがけずまたあのお茶会へ行けるというのは願ってもいないことだった。紙袋を手に提げず胸に抱えるように持つと、ゆっくり立ち上がって扉の方へ向かい。「あ、そうだ。アンタが淹れてくれたロシアンティも美味しかったわよ」部屋を出る間際、ここを訪れた時に飲んだ紅茶のことを付け足してから、ヒラリと手を振り庭へと歩みを進め)
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