零 2018-02-27 18:19:43 |
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( 酷く後頭部が痛む. 摩ることも出来ずにただ蹲る俺を、遠くからヒソヒソと囃し立てるような声が取り囲むが、今はそんな事に構う暇など無い. 「 ッてぇ…、ぜってぇ変な所打っただろ. これ… 」 今回の舞台の結果にて、相方と口論になり勢い任せに飛び出た楽屋. 次の瞬間不幸にも遅い来た後頭部への衝撃はおおよそ大道具の荷物だろうが、謝罪も無しに怪我人を放置とは如何なものか. 生理的な涙が浮かぶ双眸をそのままに、徐々に眉と心情は怒りの形へと姿を変える. 「 くっそ…! 」決めた、追い掛けて一発ぶん殴る. この際八つ当たりだろうが構わねー! ざりりと鳴る砂利を踏み締め立ち上がろうと───あれ?砂利なんて建物内にあッたっけ. 刹那後頭部の痛みすら忘れてパーカーの袖で瞳を拭えば、視界に映るは見慣れた俺のスニーカーと砂利道であり. そこで漸く鮮明に鼓膜に届く、奇異の対象へ向けるような沢山の声音. はッと顔を上げると同時に、血の気が瞬時に足元へと降っていくのをさまざまと感じた. 俺の周囲2mほど距離を開けて円を描く様に人垣が出来ている. それは未だしも、その〝 人垣 〟は皆時代劇に登場する人物に相応する容貌をしているではないか. 立ち尽くしたまま、思わず口から零れ落ちた言葉は何とも腑抜けた色味を醸し出しており. )
────っな、んだよ…これ…?
■ 売れない芸人が幕末時代にタイムスリップする話.
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