──『毛だらけ心臓の魔法戦士』。
魔法界で育った者ならだれもが知る名作シリーズ、『吟遊詩人ビードルの物語』に収録されている寓話のひとつだ。
ごく簡単に言えば、愛を信じぬ愚かな男の、悲惨な破滅の物語である。
道徳的見地から言えば、“人間の最も深い神秘”である「愛」にまつわる禁忌を犯してはならない、という教訓が込められている。
魔法研究的見地から言えば、魔法戦士が黒魔術を用いて心臓なしでも生きていることから、「分霊箱」……ホークラックスの存在が示唆されている。
しかしほとんどの人々はこれを、“想像力豊かな吟遊詩人ビードルが遠い400年前に書いた、架空のお伽話”だと認識していることだろう。
『毛だらけ心臓の魔法戦士』は、作者ビードルが愛の問題を説いた、陰惨な読み味のファンタジーに過ぎないと。
……違うのだ。
逆説的にだが、“毛だらけの心臓”を持つ愚かな青年は、確かに現実に存在する。
そして不幸にも彼と出会い、彼を「人間」に戻そうとする美しい少女もまた、引かれあうように現れる。
現代、1991年の、ここ──ホグワーツでの話だ。
>>1……『──・──と
毛だらけ心臓の魔法青年』
>>2……「毛だらけ心臓の魔法青年」
>>3……「──・──」
>>4……「魔法契約」