氷影 2017-10-25 08:38:50 |
通報 |
( 暗がりの中神秘的な光を放つ夜空の三角形。星を連れて街を練り歩くパレードを遠巻きに見つめる青年がいた。煌びやかな装飾が施された旗を掲げて金管楽器を演奏するその集団に、青年は依然として嫌悪感を抱く。外の人間から何度咎められ非難の声を浴びせられても、懲りずに下らない催し物ばかり続ける目出度い奴らだと冷ややかな視線を送っていた。しかし彼らは青年に目もくれず、楽器の音色を響かせ耳が割れんばかりの騒音を撒き散らす。青年はすっかり冷え切ってしまった細い指先を暖めるように力強く両手を絡めた。
__と、勢い良く滑らせた視線の先には、集団の先頭に立ち晴れやかな笑顔を浮かべる見知った少女の姿があった。瞬間言葉を失うも、すぐさまその意味を悟っては寂しそうに目を細め。春の淡雪のように儚く美しかった彼女も、二度と僕の下へ還ることはない。謝罪の代わりに吐き出された白い息が冷たい空気に溶けて。何もかも虚しく感じてしまう。丑三つ時に盛大に響き渡るパレードの行進曲ですら。青年はもう戻らない彼女に背を向けると、深々と降り積もる雪の中 姿を消した。 )
■ 霜夜のパレード
リクエスト "パレード" / 銀世界 / 雪国
トピック検索 |