ネ バ ー ラ ン ド の 浅 き 夢 ｡　　

そもそも俺は此処で本気の恋愛しようと思った事は一度もないし､ 文字だけの面倒臭い人間関係築くよりも現実で相手の顔を見て､ 声を聴いて､ 確かめ合いながら愛を育む方がずっとずっと健康的だと思ってる｡ 感情を持つ人間としてそれが正しい姿だって｡
だから此処での生活は余興というか､ 元々なりきりが好きで向こうで活動してて､ その流れで裏に個室作っただけだったし｡ 一生モノの愛を手に入れられるなんて､ 正直思った事もない｡ 例えば泰陽が本当に運命の相手だったとしても､ 出逢わなければ意味がない｡ 泰陽と氷影としての関係は俺らがどう足掻いたところで確かな物にはならないって｡ 知ってんだよそんな事｡
だから､ 別に俺は嘘でも良い｡

泰陽を信じる信じないは別としてあくまで仮定だけどさ､
男のフリして本当は女だろうが､ 二重人格も俺への好きも全部引っ括めて嘘だろうが､ そこまで突き詰めて嫌な思いして周りを巻き込むぐらいなら､ 知らなくて良いかな､ ってちょっと思った｡
この関係を続けるせいで俺や泰陽がもし周囲に迷惑掛けるような事があれば､ それは見過ごせないけども｡ 二人が合意の上で､ 嘘でも良いから恋人ごっこしようよ､ って､ そんな感覚でも良いんじゃねえのもう｡
だって所詮､ 画面越しの疑似恋愛じゃね-か｡ お互いがゲームのキャラクターみたいなもんだろ｡ 会うことも居場所を知ることも叶わないんだから､ 嘘も本当も確かめようがないんだしさ｡
そうやって割り切って付き合っていくしか､ 多分もう方法はない｡ 俺の単純な頭では考え付かない｡ 可笑しいよ俺ら､ 此処に居る奴ら皆可笑しい｡ だってニックネームって欄にどうせ本名でも何でもない名前入力して､ 上下によくわかんない空白空けて､ 一週間ちょっと話しただけで " 好き " だとか " 愛してる " だとか､ 同じような台詞ばっっっかり｡ 勿論俺もそのうちの一人で､ 適当に見繕った相手に生半可な気持ちで依存して､ 飽きたら名前変えて次の奴､ って､ そういう世界じゃん此処は｡ そうなんだろ?
だから最初から､ 心からの愛なんて求めてねえの｡ 俺はね｡ 分かってるからこんな所じゃ手に入らないって｡ そんな細かいとこまで見透かして吐かせて､ 嗚呼嘘だったからもう終わりにしようって､ どうせ言ってるそいつも嘘吐きだから｡

誰もが人間らしく居られないこんな場所じゃ､ 嘘と事実も紙一重なんだろ｡ だから､ もうとっくに諦めてるよ｡