赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>チェシャ猫
(二つの猫目がまん丸に見開かれる。初めて見た笑顔以外の表情を意外に思っていると、唐突に頭に触れられた。「わっ」小さく声を上げて頭を押さえれば、猫は何かあったら力になってあげるとのたまった。こちらの問いに答えた抑揚のある声も、パチパチと自ら拍手をする様子も、やっぱり普通じゃない。開き直る様子に呆れつつも、なんだか面白い猫だなと思った。まだ怪しさはぬぐい切れないが、ここの住人はそんなに悪い人たちじゃないことが分かって来たのだ。けれど続いて出て来た言葉に、わずかに身じろぎする。薔薇が喋るのは当たり前、そんな風情で猫は告げてくるのだ。その言葉に辺りを見回し、薔薇に聞こえないようやはり声を潜めた。「昨日ね、芸術家のうさぎさんが言っていたの。薔薇は悪戯好きだって……もしかして、子どもがさらわれることもあるのかしら」)
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