赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>チェシャ猫
(見慣れぬ城の廊下をゆっくりと歩いていく。肩から掛けている茶色いポシェットは、メイドに用意してもらったものだ。中にはやはり、メイドに持ってきてもらったスケッチブックと、三月兎にもらった万年筆が入っている。城で用意してもらえるなら兎から貰う必要はなかったのだけれど、それでも贈り物を受け取るなんて初めてだったから、その事実にわずかに頬が緩んだ。せっかくなので気が向いた時、いつでも絵を描けるようにポシェットに入れて持ち歩くことにしたのだ。
きょろきょろと辺りを見回していると、不意に背後から声がした。びくりと肩が跳ね「ひゃっ」と変な声をあげてしまう。振り返れば、にんまりと見知らぬ男が笑っていた。軽い挨拶を述べる口は、まるで三日月のようだ。目に痛い紫の頭には、猫の耳がくっついている。「あなただあれ。びっくりするじゃない、もっと普通にあいさつしてちょうだい」落ち着いてきた心臓を抑えながら、見上げるようにして相手を睨みつけて)
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