君ある所、我あり。 / 〆

(謝られ此方から大丈夫だと返そうとするが、きっと無意識に相手は言ったのであろう『綺麗』という言葉に心を揺さぶられ、さらに混乱してしまい言葉が出なくなってしまって。相手の言葉を受け今から雷蔵は夫婦同士でやる行為を私にするのか、と心の中に思えば嬉しくなり一層顔が熱くなって。薬指に相手の唇が近寄って来ると、てっきり指輪みたいな物でも贈られるのかと思っていたせいで、驚きと緊張からか自分でも感じ取れるぐらい強く心臓の鼓動が波打ち始めて。薬指に口で吸われる感触を憶えて、吸われた場所にぽっと染められた赤い痕を見ると、理性なんて飛んでしまいそうで。落ち着きを取り戻そうとしている内に、離れて行く手を無意識の内にぐいっと掴んでしまい。「…じゃあ、私が、お前に見合う上質で美しい指輪を渡してやる。プロ忍になったらどんどん成果上げて、お金稼いで、高級で誰を持ってなさそうな指輪を贈ってやる。だからそれまでに…婿になんか行くんじゃないぞ？ 」と雷蔵の手を強く握りながら、顔を俯かせたまま口にして行くが、最後の一言を言うと共に顔を上げ相手の目をじっと見据えて。言い終わると急に恥ずかしさが襲いかかり我に返って、ぱっと手を離し「す、すまない。段階を飛ばしすぎたな…」と目線を逸らし慌てふためいて。これじゃあまるで求婚を申し込んでいるみたいじゃないか、と自責するように恥じ入り。)