華藍(カラ松) 2017-08-29 20:38:46 |
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〉おそ松
それでも華藍は売っても、カラ松を売る津守は毛頭無い。……似たような物ならお前もそう、だろう?(似たような物だと宣う相手にくっくと笑いながら身体は打っても心そのものは売らないのが遊郭で働く者の基本中の基本。ましてや自分には心まで売りたいとまで思わないだけの理由がこの障子一枚隔てた部屋の中に確かに存在してくれている。それだけで幸せいっぱいなのだ。良い上客が、それも唯一のためで無く本心の恋慕からここから出してくれるというならば普通の花魁なら手放しで喜ぶところなのだろうが残念ながら自分にはこの片割れがいてくれるだけでどんな地獄でも住めば都。三味線に合わせて紡ぎ出される旋律の美しさに聞き惚れるように瞳閉じつつ、反物も簪もいらない。誰であろうと、頼むから俺からこの唄を取らないでくれ。最後に残った幸せを奪わないでくれと切に願うと続く相手の言葉にぷっと可笑しそうに笑いつつも嬉しさ感じては「っ…ふ。それは良い。是非俺が客相手に弾いてるときにも唄って欲しいぞ。……俺もおんなじさ。もしあの時お前を失っていたら、十四松とトド松が引き取られてすぐに井戸に身を投げていただろう。」と本心からの思いを隠すこと無く言葉にしてはまだ客を取っている花魁も居るだろう時刻に他の者にバレたら煩いだろうと思いながらも手を後ろに回し障子を僅かにだけすっと引けば顔だけを振り返って覗かせて笑み)井戸で皿を数えるより、今の方が幸せだ。
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