ものぐさ物書き 2017-08-17 15:58:19 ID:01bed38fc |
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「自分がここにいるっていう存在の確認?」
なんで?って訊かれて、あの人はそんなふうに答えてたっけ。
それからちょっと考えてから、
「怖いですよ。でも、思いきってやってみようかなって。人生は一度だけだし?」
そんなふうにも言ったっけ。
ぽつりぽつりと、考え考え、語尾を上げて喋ってた。
ニッポン語の学校じゃあ、語尾を上げるのは疑問形だって習ったけれど、なんだか最近のニッポン人は、てめえのことを喋ってたって、語尾を上げるみてえなんだ。
兄ちゃんはその人とじかに話したのかって?
まあ、話したような、話さんような……。
つまり、ビデオの中でそう言ってたのよ。
そう驚くなよ。ゴローが全部持ってたんだ。
合計で3本のビデオに出たらしいや。10代の終わりごろだったらしい。
まあ、後学のためにも、おめえも一回くらいはそういうもんも観といたほうがいいぞ。
おっといけねえ、話が逸れてきた。
今んとこは、うちのやつには内緒だぜ。
いずれにしろ、その夜はそんな話を聞いて、ゴローと一緒にあの人の裸のビデオを観て、そして酔いつぶれて眠っちまったんだ。
なに?おめえなら絶対許さねえってか?
てめえの彼女がビデオに出るのを許して、しかもそのビデオを誇らしげに兄ちゃんに見せるなんて、ゴローはどうかしてるだと?
ああ、オレもその夜はそう思ったよ。
まあ、いいからプリプリしねえで、話をもうしばらく聞けって。
ゴローは、ビデオの中でよがりまくるあの人の躰をじっと見つめながら、寂しそうに言ったんだ。
「俺にゃあ、真っ赤なBMWは買ってやれねえ。ホストクラブにいく金だって出しちゃやれねえ。そうだろ?だから…こうしてじっと見てるしかねえんだ」
ってな。
あの人のマンションにゃあ、真っ赤なBMWが、誇らしげに駐車してあったよ。
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