ものぐさ物書き 2017-08-17 15:58:19 ID:01bed38fc |
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「あれは昔の女なんだ」
ある夜、ゴローからそう言われ、オレはまたまたびっくりした。
年の瀬が近づくと、故郷を思い出して人恋しくなるのはゴローも同じだったらしくて、なんとなく一緒に酒を飲み………もちろん最初は割り勘だったぜ。そのまんまゴローのアパートに泊めてもらったりしてたのさ。
だいぶ酒がまわってから言い出したもんだから、オレは出任せだと思って信じなかった。
こう言っちゃあれだが、釣り合わねえことこの上ねえ。
夜学の同級生だって言ってたが、まあそんなこたいいや。
あの人は東京の生まれで、家は普通のサラリーマンだったらしい。
歳だけはオレたちとちょうど同じくらい。
好きな色は燃えるような赤で、好きな男のタイプは、優しくて包容力のある人。
好きな食べ物はイタリアンで、車はBMW。
ええと、それからなんと言ってたかな…。
いずれにしても、絶対にゴローと釣り合わねえってことは確かだった。
いくら毛を茶色に染めたって、畑から抜いてきたばっかりのイモみたいな顔を隠せるわけがねえし、それに言い忘れてたが、ゴローのやつは田舎の訛りが抜けきれないらしくて、なんだかちょっと変なニッポン語を話すんだ。ああ、アクセントが変だったな。
本人はそれをひどく気にしてたみたいで、あんまり誰とも口をきかなかったっけ。
オレは信じなかったね。
ところがだ。ゴローのやつはあの女のことを、じつによく知ってやがったんだ。
嘘じゃあ、とてもあすこまで具体的にゃあ話せねえ。
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