ものぐさ物書き 2017-08-17 15:58:19 ID:01bed38fc |
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「おい、ウスノロ。言っとくが、年賀状を捨てたりしやがったら、その浅黒いツラの皮をひん剥くからな!」
オレは一応我慢して、ヘラヘラ笑って行きかけたんだが、結局くるっと逆戻りすると、ゴローの横っ面を殴っちまった。
あとで聞いた話によると、実際にどっかの国のどっかの野郎が、自分の分担の年賀状を捨てちまって問題になったことがあるらしい。
八割がた配達したんだから、二割ぐらい捨てたって怒られないと思った。
そいつはそう言ってたらしいや。
だが、オレはそんな男じゃないぜ。
言っていいことと悪いことがあるって点を、ニッポン人にだってちゃんと教える必要がある。そうだろ。
ゴローと親しくなったのはそれからさ。
言っちゃなんだが、喧嘩はめちゃくちゃ弱かったな。
同じ田舎育ちでも、向こうのガキは棒ッ切れひとつ振り回したこともねえような育ち方をしてるんだ。
あのころ、オレもゴローもハタチそこそこだったけれど、きっと野郎のほうはオレと違って、喧嘩なんぞガキのころからしたこともなかったんじゃねえか。
「おめえ、なかなかやるじゃねえか」
鼻血をダラダラ流しながら、ゴローの野郎は威張って見せたが、オレのほうが手加減してそこでやめてやっただけだ。
ほんとだぜ。
まあ、それはそれとして、配達区域についちゃあ、ゴローはオレの先生だった。
野郎のほうは、郵便バイクでスイスイ行きやがる。
それに引き換え、オレはえっちらおっちら自転車を漕いでたんだからえらいことだったが、あれでなかなか優しいところがある男でな、スピードを落として「気楽にやりな」なんて言いながらつきあってくれたっけ。
それに、シンジュクからシンオオクボのあたりってのは、意外と細かい路地が多いんで、バイクも自転車もけっこう似たり寄ったりだったんだ。
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