ものぐさ物書き 2017-08-17 15:58:19 ID:01bed38fc |
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厳密にいやあ、ゴローはあの大都会の人間じゃなかった。
あの街よりももっとずっと北の、もっとずっとたくさん雪が降る小さな田舎町が生まれ故郷だったらしい。
新聞配達の奨学生として上京してきて、夜間高校を出て、それから郵便局に勤めたってわけさ。
苦労して、親兄弟を心配させねえような安定した職に就いたんだ。オレにしてみりゃあそれなりに立派な野郎だなって気もどっかにあったんだが、野郎自身はそういう境遇が不満らしくて、ちょっとでも酒が入ったときにゃあ、
「つまらねえなあ。ああ、つまらねえ」
って繰り返してたっけ。
そのせいだったのか、ゴローは髪の毛を茶色に染めて、後ろのほうは雄鶏の尻尾みたいに長く伸ばして、しかも耳にはピアスなんかもしてたのさ。
たぶん、郵便局の服務規程なんかにゃあ違反してたんだと思うぜ。
ほんというと、オレは最初、ゴローの野郎が嫌いだったのさ。
なぜって、二言めにゃあオレたちのことを、ガイ人呼ばわりしやがるんだ。ウスノロのガイ人野郎。そういうのが野郎の口癖だった。
あの国じゃあ、アメリカ人やヨーロッパ人なら別だが、オレたちみたいなガイ人は、大人しくしてるに限るんだ。だから、オレは何をいわれたって黙ってた。
だけどな、兄ちゃんの喧嘩ッ早いのは知ってるだろ。
ある日、ついに堪忍袋の緒が切れちまったんだ。
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