ものぐさ物書き 2017-08-17 15:58:19 ID:01bed38fc |
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まあ、そうやいのやいのと質問攻めにするなよ。
ああ、そうさ。
ゴローが言ってたのは全部、嘘だったんだ。
付き合ってたって話はもちろん、夜学の同級生だったって話も、悩みを相談されたって話も、なにもかもな。
だがな、それでもゴローがオレにしたあの人の話は、ほとんどがホントのことだったんだ。
どういうことかって?
つまり、ゴローは長い間ずっと、あの人のところにくる手紙を、こっそり開けちゃあ読んでたってわけだ。
まあ、そう呆れるなって。
話はまだ肝心なところが残ってるんだ。
何がなんだかわからねえまま、キツネにつままれたような気分でマンションを出てきたオレは、真っ青な顔をして立ってるゴローと出くわしたんだ。
それでゴローを問い詰め、盗み読みの話を聞き出したわけだが、問題はそんなことじゃなかった。
「おい、おめえ、これをどう思う?」
ゴローは震える手で、オレに葉書を見せた。
そこにゃあ、やっぱり例の文句があったんだ。
―――世界は冬に終わる―――
っていう、昨日の年賀状とまったく同じ文句さ。
宛名は医者じゃなかった。
何者なのか、ゴローにも見当がつかない別人だった。
やっぱり相手が転居してて、戻ってきちまったってとこだけが一緒だった。
すると、あの人は同じ文句の年賀状を、二通出したってことになる。
ゴローは首を振って否定した。
「なあ、そうじゃねえんじゃねえのか?俺は、嫌な予感がしてならねえんだ…。」
そして一呼吸して、こう続けた。
「どの年賀状も全部、こう書いたとは思えねえか?付き合ったことのある野郎ども全員にも、昔の友達連中にも、こういう文句を書いたんじゃねえのか?」
―――でも、どうして…。
訊き返しながら、オレの頭ん中にも、ドス黒い嫌な予感が拡がっていくのがわかったんだ。
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