見習い執事 2017-08-11 01:22:36 |
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おはようございます、お嬢様。
確かに月日の流れは早いもので、お嬢様ももう16歳。年頃でございますから、朝の身支度はそろそろメイドに任せた方がいいのかもしれませんね。ですが……、ああお嬢様がまだ、このテーブルよりも小さく本当に幼かった頃は、よく入浴の手伝いもしていたのですよ。当時は私の手を掴んでなかなか離してくださらなかったというのに、それが今ではすっかり大きくなられて………、
(遠慮がちに室内へと一歩足を踏み入れると静かに扉を閉じ、主人に向かって丁寧にお辞儀し。シーツから顔を覗かせ此方を睨み付ける寝起きの主人の不機嫌な様子、それさえも愛しいとばかりに優しく微笑んではベッドの側まで歩み寄り、近くのテーブルに手にしていたトレーを置いて。目覚めの紅茶をカップに注ぎながら過去を懐かしむように哀愁を含めて昔話を語り始めるものの、それも束の間。ふと室内の異変に気が付くと途中で語りを切り上げ僅かに表情曇らせ、辺りを視認。昨晩主人の就寝時間前に部屋を訪れた際、確かに窓の戸締まりを確認しカーテンを締め切ったはずが今朝になってカーテンが開け放たれ室内に暖かな陽光が差し込んでいること、絨毯に付着している足形の泥、ベッドの傍らに落ちている庭の木の葉っぱ。そして挙動不審な主人の様子からあらゆる合点がいき全てを察しては、頻繁に行われる脱走劇に毎度の事ながら己の無力を憂い、心配そうに相手の瞳をじっと見据え)
………お嬢様、お怪我はございませんか?
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