七久 2017-07-07 03:48:50 |
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逢いたいな 逢えないな
言葉は繰り返していく
触れたいな 触れないな
ただ きっと それだけのことなんです
見上げた窓の先の 木があまりにも高くて
上を見上げていたら 貴方が落ちてきました
それはきっと突然 雨のように降り出した自然現象
知らない見ていないよと 目が合う三秒前です
分からないことだらけの非日常だって
知ってみれば ただの日常になって
降ってくるのです
さあ 目を開けて 大きく開いて
手のひらを翳してみたりなんかして
似合わない似合わない 私らしくない
同じ速度でついてくる 貴方を振り切って
横を見てドヤ顔してたら 私が落ちていました
変わらない毎日に訪れた 笑っちゃうような出来事
知りたい見ていたいなんて 目が合った三秒後
さあ 声出して 張り上げて
同じ世界を見てみたいんだって
私にも羽が付いてたら 飛べるのかなって
そんな幻想描いて 私らしくないね
ねえ神様 お願いです
ちっぽけな人間のお願い
これ以上を望んだりはしないから
それでも 見てみたい
彼と同じ目線で 同じ言葉で 同じ―――
さあ 目も開いた 声も張り上げた
貴方と手を重ねて ただただ この言葉を
伝えたかっただけなんです
ありがとう 貴方が降ってきた窓から
季節の匂いばかりして 涙が溢れそうなほど
届けてくれた言葉が 何よりも沁みて
もう少しだけ 触れていたかったんです
▼目が見えなかった女の子と、たまたま病室の窓を覗いていた天狗の男の話。
▼女の子は目こそ見えていなかったけれど、三階の窓から聞こえる男性の声と、聞こえてくる羽音で人じゃないことは知っていた。最初は天使かと思ったらしい。
▼手術のおかげで目も見えて、ようやっと同じ目線で彼と話せると思ったのに。そこに彼の姿は無かった。羽でも付いていれば、変わっただろうか。
▼とある森を抜けた先。母方の古い家の裏山にそっとあった小さな社。暇そうに身体を預ける天狗の男に、少しだけ成長した彼女が逢いに来るのはそう遠くない話。
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