躑躅 2017-07-01 16:50:17 |
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棒の様に疲れきっていた事も忘れ、大好きな父の元へひたすらに駆ける。大きな屋敷には幾つものドアが立ち並び、その奥の部屋は広い物ばかり。この部屋を全部使いきれている事が、アルトには不思議であった。
一つ、二つ、四つ、五つ…まだ着かない。
六つ、七つ目がジョージの居た書斎だ。アルトは上がった呼吸を胸に手添え整え、ドアノブに手を掛けた。
「しかし、今回はどうしたものかな…まさか息子を連れて来いだなんて。」
中から聞こえて来た伯父の声に身を強張らせドアノブに手を掛けたまま、アルトは固まってしまう。
『(僕を連れて来いだって…?仕事に?一体何の為に?)』
「アルトは連れていけない、いや…連れて行きたく無いんだ。」
疑問が湧き出した頃、父の悲痛とも取れる声音にアルトはドアを見詰める。
「そうですね、坊っちゃんを連れて行くのは…。」
執事、ノアの声だった。言い辛そうに掠れた声は、幼きアルトにも事が重大であるという事は理解出来た。
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