躑躅 2017-07-01 16:50:17 |
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『父様は?』
「まだ何も、ノアが先程お茶をお持ちしてから…そういえばノアも戻って来ていなかったですね。」
いつもならば既に書斎から出て、談話室で明るく古美術品でも眺めては子供であるアルトにはつまらないだけの世間話に花を咲かせている頃。
しかし今日はいつもとは違うらしい。ジョージ専属とされた執事、ノア・シュタインもが未だ書斎に行ったっきりらしい。
『ノアも?全く可笑しな話だね。ベリーも摘んだし、父様に報告しなくちゃなのに。』
執事迄もを巻き込んだ話し合いとは一体何なのだろうか、今まで以上に好奇心を刺激されるアルトにも僅かばかりの胸騒ぎ位感じ取れた。
「ご報告なされては如何です?きっとご主人様もお褒め下さりますよ。」
両目が閉じられた屈託の無い笑みを浮かべるマーシャ、笑顔を浮かべるだけでこんなにも幼く見えるものだろうか?不思議な程にマーシャの笑顔は柔らかく、幼ささえ感じさせる。
『うーん…そうだね!今日のベリータルトは格別甘いって教えてあげないと。』
少しの間頬杖を付いて考える様な仕草、アルトのお決まりの癖である。両拳をポンと打てば満面の笑みを浮かべて頷き、父達の居る書斎へと駆けていく。
後ろでは、頭を下げ表情の見えないマーシャがその姿を見送っていた。
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