躑躅 2017-07-01 16:50:17 |
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父に言い付けられてから一時間程した頃、漸く篭にやや盛る位のベリーを摘み終えた。幼いながらもずっとしゃがみ込んでの作業は、細っこいアルトの足は棒の様に疲れきっていた。
調理場に戻りベリーの入った篭を渡す。
『マーシャ、今日のベリーはとても甘そうに熟れた物が多かったんだ。底のは潰れているかもしれないよ、もし潰れていたら今夜のデザートはベリータルトが良いな。』
『坊っちゃんはお好きですね、潰れていなくとも坊っちゃんのお好きなベリータルトは必ず食卓に並ぶようにしますよ。』
ベリーを摘むのは決してアルトの仕事ではない、普段は家政婦や執事が行うのがバルヒ邸では普通とされている。ジョイナーが来た日以外は、の話だ。
毎日食卓に並ぶ甘酸っぱくてキラキラとしたベリータルトはアルトの好物である、毎日並ぶのに敢えてねだる様に言うのがアルトが幼い証拠なのだろう。
調理場に雇われた家政婦の一人、マーシャ・イレイラがアルトにとって唯一話しやすい使用人である。
幼いアルトの言葉に少し可笑しげに笑い優しく微笑んで頷いてくれる、まるで母親の様だと感じる時もある女性だ。
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