雪月桜 2017-06-18 01:44:33 |
通報 |
意識を失った卯月を左手で担ぎあげ、男が独り言のように自身の名を口にした。
「もう寝ちゃったみたいだけど、一応教えてあげるよ。江、秋森江(アキモリコウ)が俺の名前。でも、後でまた自己紹介させられるんだろうな、面倒くさい」
怪我をした右手で拾い上げた紙切れは、先ほど卯月に手渡した物だ。
個人情報をタダで漏らすほど、江は甘くない。
血溜まりから流れる錆鉄の香りと、空気に混ざり姿を消した硝煙の香り。
銃弾等の回収可能な物は、卯月を担ぐ時に江が回収してある。
争いがあった事は発覚するだろうが、そのうちの一人が江であるとは気づかれないだろう。
江があの喫茶店の常連なのには理由がある。
あの店の裏路地には監視カメラがなく、その路地を囲う建築物も路地を覗く窓はほとんどない。
そして、江は卯月との交戦の際、すべての窓を確認しながら戦っていた。
まぁ、その油断から右手を切りつけられたのだが、卯月を飼い慣らせば今後の戦いが楽になるだろう。
トピック検索 |