雪月桜 2017-06-18 01:44:33 |
通報 |
右肩と左足の怪我だけでも重傷と言える卯月の身体は、リングから身体へと流された電流により、今にも意識を手放しそうだ。
そんな卯月の左手に、男が一枚のメモ用紙を手渡す。
紙には数行の文章が書かれているようだが、卯月にそれを読む気力はなかった。
「あれ?生きてる?おーい、俺、死体の処理は好きじゃないんだけど。というか、せっかく拾ったんだから、殺しちゃったら目覚めが悪いんだけど」
飄々とした声の男に怒りを覚えるが、指先も動かせない卯月に話す力などあるはずもない。
(ムカつく、でも…身体、動かねぇ…俺、もう…駄目か、も)
内心の怒りも、表す術がなければ伝えようがない。
怒りは死の縁に近づくにつれ、弱音へと色を変えた。
倒れ、瞳を閉ざした卯月を見つめ、男は自身の行いに後悔のため息をつく。
「ちょっっと、痛めつけすぎたかな…。俺が運ぶ、しかないよな。どうせ運ぶなら、綺麗なお姉さんがよかったのに」
どうやら男の後悔の理由は『男の怪我人なんて荷物運びたくなかった』という事らしい。
トピック検索 |