21443 2017-06-10 02:07:13 |
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…嫌だよ、寝起きのルッツの食事は痛いし、何より、私もお腹が減っているから。
それに、きっとまだ不味い。
(冷たい言葉が鼓膜を揺らす。けれどその言葉を紡いだ声の主は酷く優しく伸ばした手を掴んで、導くように引いてくれる。冷たいけれど確かにそこにある体温を感じ取れば徐々に視界が色と明度とを取り戻し、視界に入った傷みも知らない髪と、ほんの一瞬、相手の口元が首筋に近付く前に見えた紫の瞳に安堵の溜め息と静止の言葉。ルッツの首筋にくっきりと残っている自分の噛み傷を指先で撫でながら、寝起きで血流も悪ければ味も劣るだろうと続けては、撫でていた噛み傷に口付けようと顔を寄せ。まるで周りの人間の視線など無いように、目の前の餌の声しか聞こえていないかのように。少しでも周りの視線を意識すれば身体が強張って食事の痛みが増すだけだと知っているからか、ルートヴィヒの肩越しにじっと檻の柵を見て。)
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