チェシャ猫 2017-06-07 23:59:21 |
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やだヨ。油が付いたらあっちィし、手ベタベタなるじゃんか(彼の背中に顔埋めながら涙誘われていた事など露程にも気づいてないであろう言動に思わずクハ、と笑い零し、背を叩いてくる手を此方も肘で押し返しながら火傷や汚れ仕事は御免だと此方も軽口で対抗しようか。矢張り対価を支払わずして扱うのは難しいのだろう、悩んだ末に導き出してくれた彼の答えに異論を唱えるつもりは無く「分かった。また来るよ。摘み食いするかもしんねェけど、任せられた仕事はちゃんとやる…つもり。だから優しくしてなァ?」厳しく扱かれるのを懸念し、長年調理をしている逞しい二の腕を手繰り寄せてはべったりと甘える様に頬を擦り付け。数分も経った頃だろうか、漂ってくる香りに誘われ彼の腕から離れフライパン覗き込んでみると、中には新鮮な時とはまた違う、調理されたことで更に魅力的になった魚の姿。タッパーに手際良く仕舞われる其れや、あの神秘的な青い魚の塩焼き、更には彼が作ってくれたトマトソースもあるのだから間違い無しだろう。散らかしてしまった調理台や道具を片付けてから去るべきなのだろうが、今優先したいのは恋人へのサプライズプレゼント。それも温かい内に食べて欲しい気持ちが強ければ殊更のんびりしている暇はない。用意されたものを一纏めに出来るトートバッグを借りれば丁寧に中に入れ「ライオンのお兄さん、何から何までありがとう。散らかしっぱなしで悪いんだけどサ。どうしてもこの料理を食べてもらいたい人が居るから、今日は此の儘帰らせてもらってイイ?」しょげ、と眉を下げ両手合わせながら“埋め合わせに今度いっぱいチューしたげる”と彼にとって何の得にもならない提案を)
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