赤の王 2017-06-04 16:26:15 |
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>ユニコーン
お前、いいやつだなあ……
( 謝らなくてもいいし、甘えてもいいだなんて。作り笑いを解いて、探るような視線を向けた。目の前で器用に胡坐をかいたその男は、体の線が出ない服を着ていても、隠されたしなやかな肢体を容易に思い描くことができる。そのとろりと細まった目を酷く感心したように見返しては、持ち前の素直さのせいか気が付けばぽろりとそんなことを呟いていて。彼の言葉で途方もない不安から救い上げられたような気さえしたのだ。“俺が彼にとってのアリスだから”という部分が抜け落ちて、ただただ愚かに感謝してしまうくらいには。俺は嬉しそうに笑っては、むず痒さから照れたように頬を掻く。「ありがとうな」って短くお礼を伝えると、返事を待たずにまた口を開き「腹減ったけど中途半端な時間だしなあ……お前はもう昼食ったでしょ?」と話題を変えて。目の前の男が“遊びに行っていた場所”なんて知るはずもなく、当然外で昼食ってきたんだろうなあなんて呑気に考えていたのだ。狂い始めたのが“ここ”からだなんて知らずに。 )
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