赤の王 2017-06-04 16:26:15 |
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>ユニコーン
( Aventuras de Alicia en el País de las Maravillas――――聖書やシェイクスピア作品に次ぐといわれるほど多数の言語に翻訳されている児童文学。イングラテーラの男が書いたそれをふと思い出して、どこで聞いたかなんとなく知っていたそのストーリーを頭の中でなぞった。緩慢な動きで立ち上がった男が口にする台詞の中には、その作品のキーワードばかりが散らばっていて眉を寄せる。農業を営んでいる関係で、仕事のやりとりをしたことのあるイングラテーラ男のなんと嫌味臭いこと!彼らは自分らが特別な存在だと、この2000年代の今でも思っているのだ。慇懃無礼で嫌味を言っていないと死んでしまう種族か何かなのだと思う。完全に風評被害だが、そんなことを思い出しつい嫌な顔をしてしまって。「あんたらも大変だなあと思うけど、仕事があるんだ……農業やってるんだけど。俺はアリシアにも王様にもなれないし死んでる場合でもないから、早いとこ家に帰してもらえないかなあ」どうやってここまで連れてこられたのかは知らないが、見知らぬ場所であることは確か。だから状況が呑み込めていないなりに下手に出て、どうにか家へ帰してもらえないかと懇願して。だって恐ろしく現実味がないのだ、眼前の男も、その言葉も、この世界も。俺は首を切る彼の顔をただ困ったように見つめる。白くて繊細なcalabaza de culebra……からすうりみたいな男だと思った。尤も、彼には似合わないその花言葉までは知らなかったのだが。 )
( / ありがとうございます!遅筆で申し訳ないのですがどうぞよろしくお願いいたします。 )
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