苺ミルクコーヒー 2017-05-27 22:10:36 |
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【結】-和解-
自分を迎えにきた神々を見て、やっとバッコスも記憶を取り戻す。そして、事態を察したバッコスは「やっぱり人間界を滅ぼすのはやめてほしい」と他の神々に懇願するが、ヘルメス以外の神々は、予想通り、荒廃しきっていた人間界の様子に怒りを増幅させており、聞く耳を持ってくれない。
問答はエスカレートし、遂に一柱の神が「そんなに言うなら、人間界に救いがあるという証拠を見せてみろ。どこにも愛も感謝もない。明日には全員、皆殺しにしてやる」と怒鳴った。
すると「皆殺しとは本当ですか」と物影から声がする。それは、あの女性だった。神々は不意に現れた第三者に最初こそ少し驚いたが、その相手がただの人間だと把握すると、露骨に嘲った。「人間風情が今更、何の用だ。命乞いか」と。
すると、神々の前に進み出た女性は「ええ、命乞いにございます。失礼ながら、あちらの影でお話をずっと伺っておりました。お怒りはごもっともです」という前置きをする。そのうえで震えながらも毅然と《自分は殺されても構わないし、その殺され方が恐ろしいものでも受け入れよう。この時代を作った一員でもあるのだから。でも、どうか子供たちは殺さないでほしい。本当にお願いだ。そのためなら何でもする》というようなことを言った。
それはまさに「愛ゆえの台詞」だった。唖然とする神々の前に、間髪をあけずに次は孤児院から子供たちが飛び出してくる。子供たちは《お姉ちゃんを殺さないでくれ。自分たちはここに来てたくさん楽しい思いができたから、満足なんだ。お姉ちゃんは自分たちの世話ばかりして、最後はそのまま殺されてしまうなんてあんまりだ》と言った。
それはまさに「感謝あっての台詞」だったし、どちらも真に迫った嘘偽りのない言葉であることは明らかだった。
神々は絶句するが、バッコスだけは咄嗟に「私は神だ。そのことを思い出した。そして神ならば、君たちをみすみす見殺しにはしない。絶対にそんなことはさせない」と女性と子供たちに宣言する。そうである、神とは本来そういうもののはずなのだ。
最後にヘルメスが「人間の世界にも希望はある。我々は愛を教えられるし、彼等を愛せる」と執り成すと、他の神々も納得した。神々は「今の人間界は悲惨なことが多い。荒廃していて、暗い世界だ。それでも、ここに愛や感謝を知っている者たちがいる。なら、我々はもうしばらく君たちを見守り続けよう」と言い、立ち去っていく。
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