しお 2017-03-30 22:52:02 |
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( ぶちまけそうになったコーヒーカップ。とち狂ったように踊るメリーゴーラウンド。軋む車体、風を切る音が耳を刺すジェットコースター。最後に残った観覧車がくるくる廻る。強風にあおられてゴンドラが揺れると、私は巫山戯て彼女に抱きついた。1度も染めてないという黒髪はツヤツヤで、仄かにシャンプーが香る。彼女は困ったように私の頬を撫でて。悲しそうに笑って、そして視界が暗くなる。それは一瞬だったのかもしれないし、随分長かったのかもしれない。闇がとろとろ溶けて、視界に広がったのはさっきまで見ていた古びたゴンドラの中。視界の端に黒い髪が見える。背中に細くて折れそうな腕が回る。何にも気付かない私が感じたのは、下唇の柔らかさ。闇に紛れた一筋の宝石も知らないし、どろどろになった彼女の心も分からない。今迄私たちを守ってた頑丈で万能な友情の枠はぶち壊されて粉々に割れて、彼女の小さな掌に突き刺さっている。真実に目を背けた彼女の掌を包み込んで、深々と突き刺さった破片が皮肉にも生きていることを告げる。鼓膜を揺らす嗚咽、空を歩く宝石。零れる涙が肩を濡らした。もういいよ。ホントは全部分かってたの。嗚咽に混じる透き通った声が、掌の破片を奥へ奥へと突き刺していく。彼女のどろどろの心が弾ける音を聞いて。そして、____そして? )
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