はとむぎ茶 2017-03-09 16:39:28 |
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春になったら、また遊びに来るから。
そう言って去って行った大好きないとこのお兄ちゃんは、翌年の春、本当に帰ってきた。
隣に綺麗な女の人を連れて
『春の宵』
「いやぁ、しかし駿君がこんなに美人な嫁さん連れてくるた思わなかった」
「ちょっと、まだ嫁さんって決まったわけじゃぁ……ごめんなさいね、こんな田舎つまらないでしょ」
まだ昼過ぎなのに顔が真っ赤になるくらい酔っぱらった叔父さんと、その膝を叩きながらも嬉しそうな顔で笑う叔母さんは、すっかりその女の人を気に入ってしまっていた。
駿に呼ばれたのは嬉しかったけど、どう考えたって場違いなのは私だけで、一刻も早く家に帰りたかった。
「いえ、そんな。こんなに賑やかなのは久しぶりで」
鈴の鳴る音みたいに軽く透き通る声で話すその女の人は、優しい笑顔を私にも向けてくれた。愛想笑なんかじゃないということがよく分かる笑顔だ。
小さく会釈を返すだけしかできなかったことが、自分の敗北をより一層深く感じさせた。
(休憩)
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