鏡音 2017-02-17 16:19:07 |
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「ごしゅじ......」
朝、いつものように声を掛けようとして躊躇ってしまいました。
" おっはよーございます!"
" いい天気ですねえ!何処かに出掛けたい気分です!"
" 早く起きて下さい!"
普段なら言える言葉が言えなくて、起こさないように静かに見守ることにします。なんて、私らしくないって笑われちゃいますかね?
でも。今はそっとしておこうと思います。
「アヤノ......」
2年前から忘れられない相手の名前を呟きながら、涙を流すご主人。
この状態で邪魔をするほど性格悪くないですからね、私も。
大好きな人......そうですね、私にもいましたよ。電脳世界から現実に戻ったって、もう会えないってわかってはいますけど。
「......エネか?はよ、いつもより静かでびっくりした」
「そんなことないですよ、私はいつも元気です!」
『もう一度だけ、会えればいいのに』
そんな言葉を飲み込んで、いつも通りの笑みを浮かべます。ご主人はアヤノさんの夢を見てたでしょうし、心配なんてさせたくないですから。
「また、4人で集まれたらいいのにな」
「......何、言ってるんですか」
やめて下さいよ。おかしすぎて、笑えませんよ?
「エネ」
「......」
不器用なくせに。コミュ障なくせに。人の気も知らないくせに。
時々優しい笑みを浮かべるのは反則です。
「集まれるはず、ないですよ......」
「大丈夫だ」
温かい雫が頬を伝ってきます。......何で泣いてるんでしょう、私。ご主人が何で優しいのかもわかりません。でも、これだけはわかります。
ご主人も私も、過去を大切にしながら一歩ずつ、未来に向かって歩き始めているということを。
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