鏡音 2017-02-17 16:19:07 |
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もしかしたら、本当は気づいていたのに認めたくなかったのかもしれない。意地なんて、張らなければ良かった。
今更後悔しても遅いなんてわかってるけれど、一度だけ時間を巻き戻したい。そう、両片想いだったあの頃に......
「皆、好きな人とかいんの?」
バレンタインが近いからか自然にうつった恋の話題に少し戸惑う。
「いるよー!」
「本命、渡すつもり」
友達は素直にそう答えていたのに、私はつい嘘をついてしまった。
「別に、いないけど」
本当は好き。でもそれを知られたくなくて。関係を壊したくなくて自然とそう言っていた。
その日は雑談して終わり、バレンタインが来た。校内も甘い雰囲気に包まれており、皆が幸せそうにしている。
「おはよー!はい、これ」
「ありがと。はいっ」
「あ、可愛いっ」
早速仲の良いメンバーと交換をしつつ、あいつを探してみるけど何処にもいない。この時間ならいつもは教室にいる筈。
「あいつなら呼び出されてたよ、屋上に。多分告白じゃね?」
「意外とモテるよねー、あいつ」
実は私も告白しようと思って本命チョコを作ってきていた。不安が募る。もしOKしてしまったらどうしよう。足音を立てずに屋上まで行って耳をすませると、2人の声が聞こえてくる。
「好きです。これ、よかったら受け取って?」
「有り難う。俺もお前のこと好きだったから、凄い嬉しい」
ちら、と覗くと相手は仲の良いメンバーの1人だった。そういえば、確かに姿見えなかったっけ。先程誰に呼び出されたのは言わなかったのは、勝手に言いふらすと悪いと思ったからだろうか。
その場にいられずに離れていこうとすると、有り得ない言葉が聞こえてきた。
「でも良かったの?あんたあの子が好きだったんじゃ......」
「前は、な。でも、今はお前の方が大事だから」
そう、両想いだったんだ。全然気付かなかった。もっと早く。素直になって気持ちを伝えていれば、こんな思いをしなくて良かったなんて。本当馬鹿だなあ、私。
自然と一筋の涙が頬を伝う。耐えられないけれど、此処で泣いたら気づかれてしまう。涙を止めようと静かに俯くと、誰かに肩を叩かれた。
「ごめん、さっき止めなくて」
「別に、あんたは何も......」
「悪いよ。だって、好きな奴を泣かせたんだし」
何を言い出すんだろう。変に慰める必要なんて無いのに。御世辞なんて聞いても辛いだけ。
「ふざけないでよ」
「本気だから。俺はお前が好きだ」
「急に言われても困るよ」
「ちゃんと待つから、考えておいてほしい」
翌年、彼に本命チョコを渡して両想いになれることを、今の私はまだ知らない。
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