谷の向こう

谷の向こう

One Day  2017-01-28 14:34:16 
通報
私は死者たちを待っている、そして彼らを立ち去るがままにさせてあるが、彼らが噂とは似つかず、非常に確信的で、死んでいる事にもすぐ慣れ、すこぶる快活であるらしいのに驚いているくらいだ。
ただお前――お前だけは帰って来た。
お前は私をかすめ、まわりをさ迷い、何物かに衝き当たる、そしてそれがお前のために音を立てて、お前を裏切るのだ。
おお、私が手間をかけて学んできたものを私から取除けてくれるな。
正しいのは私で、お前が間違っているのだ。
もしかお前が誰かの事物に郷愁を催しているのだったら。
われわれはその事物を目の前にしていても、それはここに在るのではない。
われわれがそれを知覚するのと同時にその事物をわれわれの存在から反映させているきりなのだ。

コメントを投稿する

  • No.2 by One Day  2017-01-28 14:36:18 

 そんな日のある午後、(それはもう秋近い日だった)私たちはお前の描きかけの絵を画架に立てかけたまま、その白樺の木陰に寝そべって果実を齧じっていた。砂のような雲が空の上をさらさらと流れていた。そのとき不意に、どこからともなく風が立った。私たちの頭の上では、木の葉の間からちらっと覗いている藍色が伸びたり縮んだりした。それとほとんど同時に、草むらの中に何かがばったりと倒れる物音を私たちは耳にした。それは私たちがそこに置きっぱなしにしてあった絵が、画架とともに、倒れた音らしかった。すぐ立ち上がって行こうとするお前を、私は、いまの一瞬の何物をも失うまいとするかのように無理に引き留めて、私のそばから離さないでいた。お前は私のするがままにさせていた。

  ****、*******。

 ふと口を衝いて出て来たそんな詩句を、私は私に靠れているお前の肩に手をかけながら、口の裡で繰り返していた。それからやっとお前は私を振りほどいて立ち上がって行った。まだよく乾いていなかったカンバスは、その間に、一めんに草の葉をこびりつかせてしまっていた。それを再び画架に立て直し、パレット・ナイフでそんな草の葉を除りにくそうにしながら、
「まあ! こんなところを、もしお父様にでも見つかったら……」
お前は私の方をふり向いて、なんだか曖昧な微笑をした。

[PR]リアルタイムでチャットするなら老舗で安心チャットのチャベリ!
ニックネーム: 又は匿名を選択:

トリップ:

※任意 半角英数8-16文字 下げ
利用規約 掲示板マナー
※トリップに特定の文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます
※必ず利用規約を熟読し、同意した上でご投稿ください
※顔文字など、全角の漢字・ひらがな・カタカナ含まない文章は投稿できません。
※メールアドレスや電話番号などの個人情報や、メル友の募集、出会い目的の投稿はご遠慮ください

[お勧め]初心者さん向けトピック  [ヒント]友達の作り方  [募集]セイチャットを広めよう

他のトピックを探す:その他のテーマ







トピック検索


【 トピックの作成はこちらから 】

カテゴリ


トピック名


ニックネーム

(ニックネームはリストから選択もできます: )

トピック本文

トリップ:

※任意 半角英数8-16文字

※トリップに特定の文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます
※メールアドレスや電話番号などの個人情報や、メル友の募集、出会い目的の投稿はご遠慮ください
利用規約   掲示板マナー





管理人室


キーワードでトピックを探す
初心者 / 小学生 / 中学生 / 高校生 / 部活 / 音楽 / 恋愛 / 小説 / しりとり / 旧セイチャット・旧セイクラブ

「これらのキーワードで検索した結果に、自分が新しく作ったトピックを表示したい」というご要望がありましたら、管理人まで、自分のトピック名と表示させたいキーワード名をご連絡ください。

最近見たトピック