枯れ草 2017-01-03 14:50:55 ID:16e00feef |
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―――疾走(はや)いッ!
差し向けられた狂刄だけではない。
戦略を的確に見抜いた洞察力も。受け攻めを流れるように転換した行動力も。そして真一文字に閃いた斬撃も。
単調な鍛錬のみでは決して至ることの叶わない極みの境地。けれど今、目の前の男は確かに真に“生きるか死ぬか”の世界で“生きてきた”極みの存在。
こういう時に思い知らされる。
スペカは皆の生命を守る不文律として最適な手段ではあっても。
絶命を免れるルールを敷いてしまえば、どうしたって危機回避能力や対抗力は落ちてしまう。
「く―――ゥッ!!?」
無理矢理に体をくの字に折り曲げる。
辛うじてスッパリと真二つになる事態は回避。
続け様に“何もない”空を踏んでひらりとバク宙し、罰当たりにも神社の屋根上へ離脱する。
って、罰当たりとか地の文の分際で。
言ってる場合じゃないっての。
悔しいけどアイツは…戦闘に特化すれば汎ゆる面でデタラメに速い――!
ぜぇぜぇと吐き出す呼吸が嫌に月蝿い。
額に浮かぶ脂汗もとても不快で。
腹部を押さえた左腕の白い袖口は、じわりと赤色に侵食されていく。
さぁて。
このままだとかなりヤバいわね。
ふぅ、と一息付くと何処からともなく右手に収まっていた私の相棒。
お祓い棒を一振りし。
その瞳には、反抗の意思をありありと籠めていく。
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