枯れ草 2017-01-03 14:50:55 ID:16e00feef |
通報 |
りぃーん。
柔らかい月明かりの見守る境内に一輪の華が芽吹くように澄み渡りゆく鈴音。長く人の声を忘れていたのではないかとさえ思われたこの場所にも、息づく物達は存在していて。
りぃーん。
変わらぬ音色。変わらぬ景色。今日もまた、何千何万回と繰り返されてきた変わらぬ日常が、この神社に訪れる。
りぃー…
筈だった。
ぶちり。
途切れる声音。途切れる日常。不快感を否応なしに植え付けるような雑音により産まれたのは静寂であり、共に“日常に非ざるモノ”がその姿を覗かせる。
白一色の着流しに漆黒の笠。
首元に巻いた長尺布地も漆黒であり。
握られた右手からすらりと斜め下方に伸びる白銀の刀身も、紛うこと無き異常そのもの。
男は嗤う。微笑みを零していた満天の月を背負い、口角吊り上げた微笑みを零して。
「うふふ。」
男の足元には小さな小さな鈍褐色が広がってゆく。
トピック検索 |