枯れ草 2017-01-03 14:50:55 ID:16e00feef |
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私は少し考えた。そろそろ、美容室に行ったほうが良いかな、という具合に、枝毛の出てきた茶髪をほとんど無意識のうちに撫で、それから言葉を続けた。
「我が力の許す…ってことはやっぱり切れないものもあるんだよね?」
男の子は先程から変わらない真っ直ぐな瞳で、私をしかと捉えたまま答える。
「いや、私に切れぬものなど、万に一つもないだろう!だが、神力には限りがある。色紙を百に切り分けるぐらいなら造作もないが、岩の裁断や親子の絶縁となると、一度の用件で力を使い果たしてしまう恐れがあるのだ。そういった意味で、私は『我が力の許す範囲』と言った!神力の尽きぬうちは何であれ、幾つであれ、切ってしんぜようが、力が尽きればそこまでだ」
「…なぁるほど」
「分かって貰えたろうか!」
元気の良い男の子から視線を逸らし、私はまたちょっと考える。何を切れるか、じゃなくて、幾つの願いを叶えられるか、という方に限度があるってことで良いのかな。それにしても、岩も切れるハサミだなんて頼もしい。それなら、もしかすると、あれを切ってもらうこともできるだろうか。あまり期待はできないけれど、今、私に叶えたい願いがあるなら…、切ってほしいものがあるなら…、それはすぐに思い付いた。あれしかないんだ。
私は再び、男の子に目を向けた。
「じゃあさ、あれは切れる…?」
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