201 2016-12-29 23:04:24 |
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(口ほどにものを言う彼の瞳が揺れている。ぼんやりその理由を考えていると、薄笑いを浮かべた彼がするりと離した手を膝の上で握りこむのを見て、あ、泣く!って思った。彼と平穏に過ごすためには敏感に研ぎ澄まさなければいけない、これまでの対人関係においてはわざと機能させていなかった俺の察する力が「泣きスイッチを押したね」と冷静に囁いたのだ。でも、と続く責めるみたいな言葉たちは口から零れてしまったら彼自身止められないことを知っているから、きちんと耳を傾けて、丁重に誤解を解かなければいけないぞと頭をフル回転させる。想いを伝えあった後だからこそ納得出来ないのであろうその口調、おどけたように苦く笑っては、「……ハンカチ持ってないんだ。持ってたら泣いていいってわけじゃないけど。」なんて言って彼の太ももにそっと手を置いた。……まったく何でこうなったかな!?このままいい雰囲気で俺のボロアパートまで車を発進させるシナリオを能天気に描いていたから、何が泣かないでだお前が今泣かせてるんだぞと心の中で自分を罵倒しては白目をむきそうになるのをぐっと堪える。彼の太ももに置いていた手を冷汗が滲む自身の額に移動させ、鬱陶しい前髪をかき上げ平常心を取り戻したらそのまま肘をステアリングに置いた。「ならきみこそうんなんて言わないでよ。知ってたら帰さないし……不安にさせたのは悪かった。でも俺、きみに帰れとは言ってないでしょ?」困ったように笑っては、穏やかな声でそう告げた。そして返事を待たずに「……この件に関して悪いのは絶対場所だ。だって二人っきりならきみの恋人はきみが望むこと何でもしてあげられるからね。賢い竜児、俺の馬.鹿な発言許すのは後でもいいから、泣き止んで、早くこいびととして触らせて。」また縋るように懇願しては、曖昧に微笑んでじっと彼の反応を待つ。セラピードッグも顔負けな精一杯の気遣いは、誰に褒められなくなっていいのだ。だって俺は多分、竜児のそばにいながら竜児の面倒なところを最も理解しようとしていない男だから。俺と竜児は絶望的なくらい考え方が近くなくて、だからぶつかることも多いし、これからも絶対ゼロにはならない。だけど竜児の苦悩を勝手にわかったふりして自己完結したくないから。理解できない重苦しさを、その都度わかっていきたいと思うのが俺の彼への愛だから。そうしてちょびっとずつ受け入れて、二人で歩いていけたらそれがいい。だから誰に褒められなくたっていいのだ。竜児に向けられた愛の中で、これは俺だけの形でいいから。)
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